
10/07/2025
7月11日は水戸の黄門様で有名な水戸藩藩主、徳川光圀(1628-1701)誕生日、そんな、黄門様の映画では飼い主を想う猫が化け猫になって仇討ちをすると言うエピソードがありました。
「水戸黄門漫遊記 怪猫乱舞」(1956年)から
夜の闇に包まれた上州沼田の古い寺。月明かりが石畳を青白く照らし、風に揺れる竹林が不気味な音を立てる。悪徳家臣・黒川(仮名)は、側室の陰謀に加担し、忠義な家臣を殺した罪を隠すため、寺に隠れていた。しかし、彼の背後で、かすかな猫の鳴き声が響く。「ニャア……ニャア……」。
黒川が振り返ると、暗闇の中、燃えるような二つの目が浮かんでいる。化け猫「たまちゃん」だ。白い毛に覆われたその姿は、月光を受けて幽鬼のように輝き、鋭い爪が闇を切り裂く。黒川は恐怖に顔を歪め、刀を抜いて振り回すが、たまちゃんはふっと消え、次の瞬間には彼の背後に現れる。
「だ、誰だ! 化け物め!」と叫ぶ黒川の声は、寺の静寂にこだまする。そこへ、水戸黄門と助さん、格さんが静かに姿を現す。黄門は冷静に言う。「その猫は、そなたの罪を見ずにはおられぬ。忠義な魂の怒りが、この化け猫を動かしているのだ」。
たまちゃんが一気に跳びかかり、黒川の着物を引き裂く。悲鳴を上げて逃げ惑う黒川だが、化け猫の妖力に追い詰められ、ついに石段で足を滑らせ倒れる。月光の下、たまちゃんは一瞬、殺された飼い主の面影を映し、静かに消える。黄門は杖を突きながら呟く。「正義は、人の手だけでなく、魂の力によっても成されるものよ」。一行は夜の闇に消え、物語は静かに幕を閉じる
おしまい