08/08/2023
【Vm3ニュース】キプロス政府は、猫伝染性腹膜炎(FIP)に対してヒト用コロナ治療薬を使用することを許可(AP News)
キプロスの獣医師会は、ヒト用コロナ治療薬の在庫を猫に使用することを許可する政府の決定を高く評価しました。これは地中海の島で数千の猫を死亡させたウイルス変異と戦うための措置です。FIPは人には伝播(でんぱ)しません。
獣医師会では声明で、2023年の初めから、島の猫で目立ち始めた致命的な猫感染性腹膜炎(FIP)の変異に「手頃な価格」で治療薬にアクセスできるよう政府に請願していたと述べました。
「FCov-2023の増加を調査し、制御が持続できることを保証したい」と獣医師会は述べています。
キプロス獣医サービスの責任者であるHristodoulos Pipis氏が、8月4日金曜日に国営放送に語ったところ、猫の所有者は正式な診断の後、地元の獣医師のオフィスで1錠2.5ユーロで錠剤の形で薬を受け取ることができると述べました。
この治療薬のブランド名はラゲブリオで、その有効成分はモルヌピラビルです。保健省の上級薬剤師であるCostas Himonas氏は、APに、次の1ヶ月間に獣医師に段階的に提供される2,000パッケージの薬剤が利用可能になると述べました。 Himonas氏は、現在の在庫が人のCOVID-19の急増の際でも治療が妨げられる程まで枯渇するリスクはないと述べました。(Vm3意訳)
https://apnews.com/article/cyprus-covid19-cats-virus-peritonitis-mutation-16484f95aace4ef91c8678094419db77
《Vm3オピニオン》キプロスの猫に朗報ですね。
日本でもFIPで苦しんでいる猫ちゃんは多く、また治療するために飼い主さんも獣医師も苦労しています。課題として、日本では政府(農林水産省)が製造販売を承認したFIP用のワクチンや治療薬がなく、獣医師が自己の責任において治療薬を猫に処方する必要があることです。
また、その治療薬と称するものが外国製のサプリメントであったり、エビデンスが乏しいものであるにもかかわらず輸入するのに非常に高価であることも問題で、飼い主さんがクラファン(クラウドファンディング)で広く協力を乞う状況であったりします。
ラゲブリオ(モルヌピラビル)は新型コロナの治療薬として厚生労働省が製造販売承認を与えていますが、薬価は非常に高く、200mg1カプセル2,357.80円です。今回のキプロスでは1カプセル2.5ユーロ(約393円、€1=157円)と、日本の薬価の約1/6で猫に投与できることになります。実際の用法用量の記載がないので、実際にいくらになるのかは分かりません。
現在ヒトでの治療ではモルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間の経口投与で用いるため、1日薬価は1万8,862.40円(2357.80円×8錠)、5日間で94,312円となります。
それでも、現状の猫のFIP治療薬と称する製品の価格と比較すると非常に安いわけです。猫ではヒトに比べて体重も少なく、投与量が少なくて済むので費用としてはかなり安くなるでしょう。
記事では、「FIPは治療されない場合ほぼ常に致命的であり、薬が病気のウェットタイプでもドライタイプでも約85%のケースで猫を健康に戻すことができる」としています。
キプロス政府と獣医師会の連携が大きな実を結ぶよう祈っております。
Veterinarians in Cyprus are lauding a government decision to allow its stock of human COVID-19 medication to be used against a feline virus that has killed thousands of cats on the Mediterranean island.